センスメイキングと私

 

この半年、多くの本を読んできた。新しく購入した本もあれば、読み直した本もある。読み直しながら、「なぜここに赤線を引いたのか」「なぜ前はここに赤線を引かなかったのか」など、最初に読んでから私に起こった変化を楽しんでいた。
 

『センスメーキング イン オーガニゼーションズ』は違っていた。2015年に、「私のストロングスキルは何ですか」と知人に尋ねて教えてもらったのが、“センスメイキング”(この本では“センスメーキング”となっているが、『想定外のマネジメント』では“センスメイキング”と顕し、また一般的に“センスメイキング”となっているので、本からの引用を除き“センスメイキング”と統一する)。3年ぶりに読み直して、3年経っても変わらない強みに気づいた。
 

改めて読み直すと、イノベーション思索の旅無の探究の旅そして私の活動物語と通じるものが多くあった。交差した点を織り交ぜながら、次のキーワードを中心に、センスメイキングについて書いていく。
 

< キーワード >

① センスメイキングとは、何か

② センスメイキングとは、どのようにしてするのか

③ 組織(マネジメント)に、どう関係していくのか
 

 

< キーワード① >

センスメイキングとは、何か

 

センスメイキングを初めて聞いたとき、頭に浮かんだのは「?」。何を意味しているのか、全くわからなかった。本にはいろいろな意味が書かれていて、一言での説明は難しい。冒頭に概念的なことを筆者の組織心理学者のワイクは、いろいろな言葉を引用しながら、次のように書いている。本を読み終えて、一番しっくりきた表現だった。
 

センスメーキングとは実にうまいネーミングの概念である。というのは、文字通りそれは意味(sense)の形成(making)を表現しているからだ。能動的な主体が、有意味で(sensible)、知覚可能な(sensable)事象を構築する。彼らは「未知を構造化するのだ」。

( P5より )

 

私は「訳し家」と名乗り、そこには翻訳と通訳の二つが含まれている。翻訳とは、コトバを言葉につなぐことで、概念をカタチ(意味)に紡ぐことをさしている。センスメイキングは、この翻訳に非常に近い。言葉が違うだけで、同じことを顕している。
 

センスメイキングにとってのポイントは、“未知の構造化”にある。構造化には、次の3つが問われる。問いの答えをつなぎ合せていくプロセスで、意味が明らかになっていく。問いに答えるよりも、このプロセスこそがセンスメイキングである。意味が浮き上がるまで、何度も何度も問い続けていくことが大切になってくる。
 

・ どのように構築するのか(How)

・ なぜ構築するのか(Why)

・ どんな作用をするのか(Output、Outcome)

 

なぜ、センス(意味)なのか
 

この問いを意識の前に立てながら、本を読んでいた。一番しっくりした答えが、次の二つの文章であった。文章にある“名前”こそ、意味である。
 

問題設定は、相互作用を通して、自分たちが注意するだろう大事なことに名前を付け、注意する際に用いるコンテクストをそれらに当てはめる過程である。

( P11より )

意味は(生じなかったり失敗したりするような構築を必要とするよりも)すでに存在し発見されるのを待っているのだ。

( P20より )

 

実はこの二つの文章は、前回読んだときには赤線を引いていなかった。今回、私の琴線に触れたのには、理由がある。それは、無の探究の旅③で引用した井筒俊彦の言葉だった。
 

「名」があって、はじめて「無」が「有」になり、そこにはじめてものが出現する。

( 『意識の形而上学』P40より )

 

井筒の言葉以外にも無に対する探究を通して、私の無の捉え方とセンスメイキングが似ていることに気づき、驚いた。3年間いろいろ探究や思索の旅を続けてきたが、結局ここに戻った。いや、ここに舞い戻るための旅だった気が今はする。私はセンスメイキングを、次のように顕す。
 

“何かを”意味あるものにすること
 

「センスメイキング」については、いろいろな言葉があったが、印象に残った言葉を紹介する。
 

センスメーキングはいかにして実体がそこに存在するにいたったかを説明する。

( P41より )

センスメーキングとは、手元にある資源でなんとか間に合わせるというプロセスである。

( P193より )

 

この文章は、私のイノベーションの考え方に近い。この半年間の、イノベーションの思索や無の探究の旅はここに至るためのプロセスだったのではないかと、読み終えた今強く思う。振り出しに戻ったのではなく、“ここに”舞い戻ったという感覚で今満たされている。そして戻っただけなく、“ここから”また歩き始めていく。この文章を書きながら、半年間は巡礼の旅だった気がしている。
 

この“sense”という言葉についても、ただ感じるとは違う。目の前の何かに触れるような感じではなく、触れた奥に在る何かを発見することが、この“sense”に込められている気がする。触れるのも感じるのでもない、まだみえていない何かを探し出す。この半年間、自分の役割は何かと考え続けてきた。その辿り着いた答えが、「扉でありたい」だった。この扉のカギのつくり方がセンスメイキングであったことを発見した。
 

 

< キーワード② >

センスメイキングとは、どのようにしてするのか

 

センスメイキングのプロセスは、次のように書かれている。
 

センスメーキングという概念は、解釈そして再解釈される痕跡を刻む行為や活動や創造を浮き彫りにする。

( P17より )

 

このプロセスは、扉のカギのつくり方に非常に近く、カギをつくるプロセスは次の3つからなっている。言葉遣いなど近く、またこれ以外にも似たような表現が本には数多くあり、嬉しい気持ちになって、次どのような表現に出会うのかを楽しみにしていた。

 

(カギをつくるプロセス)

掘り起こす

  みえていなかった本質などの存在に“気づく”

 

浮き上がらせる

  元々在った価値(意味・意義)を“発見する”

 

表現する

  自分の言葉で “認識できる(みえる)”
 

加えて、思考をくすぐる興味深い表現もあった。演繹と帰納という言葉で、数学的思考がセンスメイキングとも関係していることを表現している。演繹法と帰納法を使うことで、行ったり来たりしながら、無形なる概念をカタチあるものに整えていくプロセスを表現している。この思考を持っているかどうかが、センスメイキングの大きなポイントになる。
 

センスメーキングは、非常に明確な理論からの演繹にもとづいていると同時にあいまい性を削減するための数々の生々しい個別事例からの帰納にもとどいている。

( P17より )

 

 

< キーワード③ >

組織(マネジメント)に、どう関係していくのか

 

なぜ本のタイトルが「センスメーキング イン オーガニゼーションズ」なのか。それは、組織における“意味”が果たす役割を顕しているからである。これからの社会に求められるよりよい組織をつくっていくために必要な、リーダーシップ像について次のように書かれている。
 

(リーダーシップ)
 

リーダーとは意味を付与する者である。

( P12より )

リーダーシップとは、(まとまりとか方向性といった感情がそれによって生ずる)準拠点を生み出すことである。

( P68より )

 

「リーダーシップとは何ですか」と尋ねると、多くは組織を引っ張る力だと思っている。しかしリーダーにもいろいろなタイプがあり、引っ張るとは違う「サーバントリーダー」もよく耳にする。近年では、組織のカタチが従来のピラミッド型からフラット型に変わりつつある。組織のカタチが変われば(ホラクラシーやtealなど)、求められるリーダーシップ像も変わり、リーダーの役割が大きく変わる。センスメイキングで書かれたリーダーシップもそのうちの一つである。
 

他にも、センスメイキングが組織の橋渡しとしての機能があることも指摘している。意外だったのは、政治的な機能について説明である。政治という言葉から政治家をイメージするが、政治家の仕事とは何かを考えると、非常に面白い。組織と組織が共創していく上では、非常に求められる。
 

意味をそこに置くことで、いろいろなつながりが生まれていく。ただつなげるだけでない、つながることで、より大きな何かを創り出していく。このように考えると、センスメイキングにはイノベーションの触媒の機能もある。
 

最後に、センスメイキングについて書かれた記事を紹介して終わりたい。
 

(参考記事)

イノベーションに欠かせない「センスメイキング」とは